心に平穏を。

Fuck my life

みんな知らないで使ってる言葉「イノベーション」(高校2年生に向けた発表原稿)

<Intro>

皆さん、初めまして。本日は皆さんにイノベーションについてお話しする機会を設けていただきとても光栄です。皆さん、テレビとか他のマスメディアでイノベーションという言葉を聞きますよね、あるいは見かけますよね。私はもう耳に胼胝ができるほど聞いて、イノベーションという言葉が嫌いになりました。なんか音が嫌いなんですよね、「イノベーション」っていう。まあそういう個人の感情は今回おいておきましょう。このイノベーションっていう言葉ですが、マスメディアだと定義が曖昧なまま乱用されていると思うのです。そのせいかイノベーションという言葉がとてもふわふわしてきてしまい、何がイノベーションなのかよくわからないという状況になっていると思います。ここで皆さんに伝えておかないといけないのは、何がイノベーションなのかについて今でも沢山の議論がされているということです。あまりにもこの言葉が使われすぎて、イノベーションという言葉が絶対的な定義がされているように感じますよね。今回は、全ての議論を紹介することはできませんが、一部の人のイノベーションの定義について紹介したいと思います。今回紹介することが絶対的な定義ではないことを念頭において聞いてください。

また、これからイノベーションについてお話しさせていただくのですが、話している最中に常にし続けて欲しいことがあります。それは話の中に疑問点がないか、矛盾点はないか、間違いがないかを常に考えながら、聞いて欲しいと思っております。これは多分なんでもそうなのですが、学校の先生の授業で常に何か矛盾点がないかを探してください。それをすることによって物事を批判的に見る力を養うことができます。別に私の話が合っていると思わなくて構いません。私の話を常に批判的に聞いてください。あとは、皆さんスマートフォンや携帯端末を持っているかと思われますが、それらを駆使して知らない言葉やわからないことを調べながら聞いてください。Webや辞書はとても有用です。本当は高等学校での授業でどんどんそうした検索ツールを活用して欲しいのですが、まだまだいろいろなしがらみがあってなかなかうまくいかないですよね。特に社会科目なんてGoogle先生の方がとても沢山のことを知ってるのに。

 

<定義>

まずイノベーションという言葉は誰によって作られたか。それはシュンペータという人が考えたのですが、彼によるとイノベーションはこのようなものであるらしいです。

「経済活動の中で生産手段資源やそして労働力などを今までとは異なる仕方で「新結合」 すること」

まあ、いうならばいろいろな性質のものを組み合わせて新しい何かができることですね。さらには、

「経済的・社会的価 値を生み出すあらゆる改革行為のこと。」

とも定義されています。皆さん、イノベーションというものは「新しい科学技術を生み出すこと」というように認識しているかもしれませんが、別に科学技術に絞ってないんですよね。そこが皆さんの中で誤解があった部分だったかなとも思います。

イノベーションを、経済的・社会的価値を生み出すあらゆる改革行為のこと、と定義しましたが、とても抽象的な表現ですよね。もっと細かく定義していきましょう。

持続的イノベーションと破壊的イノベーション

ある人のイノベーションに関する理論が最近のイノベーションの定義でよく使われています。その人はクレイトンクリステンセンという人なのですが、その人はイノベーションを大きく分けて、大きく分けてですが、持続的イノベーションと破壊的イノベーションに分けました。持続的イノベーションに関してはあまり、いうことはありません。持続的イノベーションとはあるプロダクトの機能が常に上昇し続けて世の中の経済的・社会的価値を生み出すことです。これはテレビゲームとかだととてもわかりますよね。

最近のPS4ゲームソフトのグラフィックは本当にまるで現実世界のようですよね。あれはUnreal Engineというものなのですが、皆さんもUnreal Engineというライブラリを無料で使えます。パソコン一台あれば、ゲーム作れますよ。しかもそのパソコンも別にとても高価なものが必要なわけではなく、標準的な性能パソコンで動かすことができます。GeForce GTX 680というGPU、いわゆる画像処理を司る基盤があれば問題ありません。これは決してとても性能がいいGPUではなく、標準的なPCに搭載されてます。すごい世の中になりましたよね。いや、本当にすごいんですよ。本当に簡単にゲーム作れますよ。まあそのUnreal Engineは今バージョン4なのですが、これはエンジニアたちが必死に開発し続けて今日に至るまで進化しました。これは持続的に性能が向上しているので、持続的イノベーションの一つと定義できます。あとこれに関してもう一つ述べたいのが、Unreal Engineプログラミング言語でいうC++で書かれているライブラリです。これはどういうことかというとUnreal EngineC++というすでに開発されたプログラムをかくツールで作られているゲームプログラムを書くためのツールなのです。つまりUnreal Engineを使うというのはその下に沢山のプログラムが書かれている上で動くプログラムを使うということなのです。多分皆さんにとっては何言ってるかわからないですよね。

例えていうならもし皆さんが絵を描くときに、絵の具を自然の素材から作ったりしませんよね。すでに売られているアクリル絵の具なりを購入して描きますよね。そういうことです。すでに発明されたものを使って新しいものを作るのです。ゲームの開発でも同じことが言えます。つまり何が言いたいかというと、いまある既存のツールを使うというのは、新しいものを作るという点で ”手段の一つとして” とても重要であるということです。


次に、破壊的イノベーションについて説明します。これについては、山口栄一さんという物理学者がいるんですけど、その人がある研究会で説明した内容をそのまま引用させていただきます。その研究会で彼はハードディスクドライブを例に使いました。以下は彼が話した内容そのままです。

(以下わかりやすく文章を修正した山口さんの発言の引用)

「ハードディスク・ドライブは、14 インチから 8 インチ、5.25 インチ、3.5 インチとしだいに小型化しました。これは別に技術革新でもなんでもありません。たんに小型化しただけです。そのせいで、記憶容量も小さくなるにつれて下がります。

このように性能が下がって何が起こったかと言うと,14インチから8インチになったときに14インチを売り出していた会社は潰れ、8インチを開発して売り出した新興企業は設けました。5.25 インチのハードディスク・ドライブを開発して売り出したときに、8インチを売っていた会社は潰れました。さらに、3.5 インチのハードディスク・ドライブをある企業が売り出したときに、5.25インチを売っていた会社は先例から、顧客調査をしました。その結果ニーズがないと判断したため売り出さなかったのですが、後に3.5インチのディスクドライブはノートパソコンで広く採用されるようになりました。その結果、5.25インチを売り出していて、3.5インチのものを売り出さなかった会社はノートパソコン事業に参入できませんでした。 このように、性能を落とすようなイノベーションが起きて市場が攪乱される。このことを、クリステンセンは破壊的イノベーションと呼びました。破壊的イノベーションとは、第 1 に「製品の性能を、主流市場では認められないほど落とすイノベーション」のこと。第 2 に「潜在市場が発見され、その潜在市場が主流市場を壊すイノベーション」のことです。」

このように定義されたものが破壊的イノベーションです。しかしながら、みなさんGoogleなどで色々調べながら聞いていてくれてると思うのですが、このイノベーションの定義に関して、様々なwebメディアが取り上げてるはずです。それらに書いてあるイノベーションの定義、バラバラだと思いませんか?

私がこの前見たwebメディアの破壊的イノベーションの例は「コンピュータの性能(処理能力)が指数関数的に伸びている」ことでした。おかしいですよね?(笑)

なんで性能上がってるのに破壊的イノベーションなのか、と。

 

<高校生向け実用知識>

このような事例から私が言いたいことは、イノベーションとは関係ないかもしれませんが、「沢山の情報を比較検討してどの情報が事実かを分析することが重要」ということです。昨今では様々なwebジャーナルが乱立してしまっていて、情報の取捨選択が難しいと思います。その中で正しい情報を得るためのポイントは「記事の参考文献を調べる」こと。これがなければ怪しいと思った方がいいです。それなりの記事の信頼性を考慮している記者であれば、参考先は記載するはずです。これはとても重要です。さらにはこの参考文献をどんどん遡ったりすることで、理解を深めることもできます。これは様々な勉強で使える技だと思うので、ぜひ参考にしてください。


もっと詳しくイノベーションについて知りたい方は、Google Scholarと検索して出てくるサイトで、「イノベーションとは」と調べたり、私が今日紹介したクレイトンクリステンの論文を、英語長文の勉強がてら読んだり、あとは山口栄一さんの「イノベーションはなぜ途絶えたか: 科学立国日本の危機 」という1000円いかない新書を読んだりして見てください。私の話はとてもじゃないですけれど不十分なので、ぜひ追加で調べたりしてください。受験勉強って必要なこと以外を学ぶことが効率悪いような気がしますが、むしろもっと広いカテゴリで勉強を進めると面白いですよ。例えば歴史を勉強するのに教科書だけではなく、Wikipediaで単語や人物名を調べて見たり。まあWikipediaは決して全ての情報が正しいわけではないですが、勉強の取っ掛かりとしてはとても有用だと思っています。皆さん、来年の受験勉強は、受験受かればいいやと思うのではなく、せっかく1年間一生懸命勉強するのですから、楽しんで見てください。案外楽しいですよ。
今日はありがとうございました。

【参考文献】